2025 屋久島&種子島 - 大自然と科学を心に刻む冒険

本ブログは、2025年8月1日から7日に開催されました、キャンプシップアカデミーの屋久島 & 種子島プログラムの様子をまとめたものです。

キャンプシップとして初めての屋久島・種子島、そして初の6泊7日という長期プログラムの様子を感じていただけると思います。

まずは結果と感想を3行で

雨が多いと言われる屋久島・種子島で、一度も雨に降られず、予定していた全てのアクティビティを予定通り実施することができ、海・川・山・科学に存分に触れることができた素晴らしいプログラムでした。

7日間があっという間で、「来年はもっと長くやりたい!」という声が子どもたちから挙がるほど、充実感に満ちた1週間でした。

また、長期プログラムだからこそ子どもたちの自立成長や協調性を育む機会が多くあり、ロングキャンプの醍醐味を実感した7日間でした。

現地で受け入れをしてくださったNPO法人Hub&Laboさん

今回のプログラムは、キャンプシップアカデミー単独では決して成し得ない貴重な体験をたくさんさせてもらいました。その立役者が本プログラムを共同開催させていただいたNPO法人Hub&Laboの皆さんです。

代表のやっくん(福元さん)との偶然の出会いから始まり、子どもたちが思いっきり屋久島&種子島で好奇心の養う機会や、地元の子どもたちと島外の子どもたちが共同生活をしながら価値観や文化の違いを感じる機会を創りたい、そんな思いが重なり今回の共催プログラムが実現しました。

キャンプシップアカデミーから参加した子供たち31名と、屋久島の地元の子どもたち10名、スタッフが総勢10名、総勢51名の大所帯でキャンプをし、ご飯を作り、共同生活をしました。

プログラム中、こんなシーンがありました。

屋久島の子どもたちが道路脇に生えている観葉植物のような大きな葉っぱ草をむしり取って遊んでいると、キャンプシップの子どもが「だめだよ、植物がかわいそう!」と声をかけました。

それを聞いた地元の子の頭からは「?」が浮かびます。屋久島の子どもたちにとっては、大きな葉を持つ植物はどこにでも生えている遊び道具である一方、都会に住む子どもたちにとって観葉植物は、人の手で管理された守られるべきもの。

こうした小さな価値観の違いから生まれる「違和感」を子どもたちは感じつつ、一緒に遊ぶことで仲が深まっていく姿を見て、子どもたちの人間としての成長を感じました。

今回、Hub&Laboさんがコーディネートしてくださったからこそ、ウミガメの赤ちゃんが孵化して海出ていく瞬間を観察できたり、安房川の支流で沢登りを体験し、天然の巨大ウナギを見たり、知る人ぞ知る滝壺で飛び込みをしたりと、深い体験をさせていただきました。

改めまして、Hub&Laboの皆さん本当にありがとうございました!

プログラムのハイライト

1日目

羽田空港に集合し、7日間も家族と離れることにドキドキとワクワクが混ざった複雑な心境の子どもたちと一緒に飛行機に乗り込みました。

別れ際に寂しくて涙してしまった子も数名いましたが、すぐに切り替えてこれから始まる旅に向けて楽しい気持ちを膨らませていきます。

鹿児島空港に到着し、福岡県や香川県から参加するメンバーが合流しました。キャンプシップアカデミーの拠点は東京ですが、現地集合や途中合流などを柔軟に受け入れており、今では全国から私たちのプログラムに参加してくれる子どもたちが増えています。

いざ屋久島に到着!

地方空港ならではのローカル感に圧倒される子どもたち。荷物をピックアップしてバスに乗り込みます。初日の目的地は栗生(くりお)という島の南部に位置する集落の中にある「屋久島青少年旅行村」です。

旅行村に到着すると既に屋久島組が到着しており、キャンプシップメンバーのために初日の夕食を作って待っていてくれました。そんな温かさに感激しつつ、夕日を見ながらサンセットディナー。都会に住んでいるとなかなか見ることのできない絶景に、子どもたちは興奮した様子でした。

夜は星空観察。これまで見たことのない星の数に圧倒される子どもたち。天の川がくっきり見え、流れ星もたくさん見れました。

今回のプログラムには現役の小学校の理科の先生もリーダーとして参加しており、星座に関するレクチャー聞きながらみんな真剣に星座を探していました。

2日目

今回のプログラムで合計3日間お世話になった屋久島青少年旅行村は、宿泊場所は素敵なバンガローで冷房や冷蔵庫、シャワーもついていて快適ですが、食事の提供がないため全て自分たちで自炊するプチサバイバル。

朝食はみんなでオープンサンドを用意して食べました。

2日目は丸一日海遊びの日!

宿泊場所から徒歩数分の場所にある「塚崎タイドプール」で海水浴をしました。タイドプールとは、海の一部を防波堤で囲い安全に遊べるよう作られた海水プールのこと。岩の上から飛び込んだり、魚を観察したりとそれぞれが思い思いの形で海を満喫しました。

夜は屋久島名物の「トビウオ」を贅沢に焚き火で焼き、自分たちで食材を調達してきて豚汁を作って食べました。焚き火で焼いたトビウオが絶品で感動!そして具沢山の豚汁も1日海で遊んだ身体には沁みる優しい味でした。

何より、子どもたちが自分たちで相談して買い出しに行き、協力して調理するというプロセス自体に学びがあり、共同作業を通じて子どもたちの距離感がグッと縮まったのを感じました。

3日目

全員で朝4時に起床し、栗生海岸まで歩いて移動しました。

お目当ては、そう「ウミガメ」です。

残念ながらウミガメの産卵には立ち会うことができませんでしたが、運良く「ウミガメの孵化」の瞬間を見ることができました。

体長5cmにも満たない小さなカメが光の反射を頼りに海の方向へ必死で歩き、大海原への旅たっていきます。

ウミガメは、太平洋を横断しアメリカまで行った後、産卵のために必ず自分が生まれた浜に戻ってくるそうです。しかし、ほとんどのウミガメは大人になる前に他の動物に食べられてしまいます。

子どもたちは、生命の新たな誕生と自然の摂理に思いを馳せながら、生まれたばかりの子ガメが海へ旅立つ瞬間を一生懸命観察していました。

その後、屋久島青少年旅行村をあとにし、島の西側にある「西部林道」を通って屋久島の世界自然遺産エリアを冒険しました。このエリアには野生の動物が多く、鹿や猿を観察することができました。

Hub&Laboのやっくんが移動中に屋久島にはたった7種類しか野生の哺乳類がいないということを教えてくれました。

屋久島には、くまもきつねもうさぎもいないそうです。(7種類の哺乳類:しか、さる、こうもり、もぐら、ねずみ、たぬき、いたち)

世界自然遺産エリアを出た後は、大迫力の大川(おおこ)の滝でお弁当を食べ、その後バスで一気に島の北側まで移動しました。午後は一湊(いっそう)海水浴場で海遊びをしました。

当初の予定では軽くビーチで遊ぶ程度を想定していたのですが、綺麗な海に子どもたちは大興奮!2時間ほど目一杯海水浴を楽しみました。海中ではエイなども観察できました。

3日目からは宿が変わり民宿「水明荘」さんにお世話になりました。私たちのために貸切でご対応いただき、ご飯も美味しく大きなお風呂もついていて、子どもたちは大満足でした。

4日目

4日目は朝から出発し、白谷雲水峡の入り口までバスで向かいました。そこから往復約6時間におよぶ屋久杉トレッキングを行いました。屋久杉とは?というレクチャーを聞きながら、屋久島の独特な植生に目を向け、登っていくにつれて変わっていく景色を楽しみんがら歩く・歩く・歩く。

樹齢1,000年を超える立派な屋久杉は、見ているだけで大きなパワーを感じ、自然の偉大さ、自分の小ささ、過去の歴史などに思いを馳せる時間でした。

子どもたちも屋久杉を見て触って何かを感じてくれていたように思います。

全員がトレッキングを最後まで頑張ったあとは、地元の有名なお茶屋さんでソフトクリーム!抹茶ソフトが絶品で、子どもたちの疲れは一気に吹き飛び笑顔が弾けていました。

5日目

5日目は、長旅で疲れが見えるタイミングのため、疲れ気味の子は少しペースを落として体力を回復する日に充てました。約半分の子が屋久杉自然館を訪れ、屋久杉に関する様々な展示を見学したり、実際に手を動かしてワークショップをしたりして楽しみました。

まだまだ体力に余力のある残りのメンバーは、地元出身のやっくんが案内する知る人ぞ知る沢登りスポットにチャレンジしました。

冷たい水を掛け合うとこから始まり、天然のウナギ、カニやエビ、スッポンなどを見つけながら30分ほど歩くと、美しい滝つぼに到着!

ここでは子どもたちが思い思いに飛び込んだり泳いだりして、マイナスイオンをたっぷり浴びながら楽しみました。

午後は尾之間という集落にある尾之間温泉に路線バスを使ってみんなで行く、というアクティビティを実施しました。49℃の源泉掛け流しの温泉で、普段なかなか体験することのないほどの高温にみんな最初は驚きつつ、地元のおじいちゃん/おばあちゃんに入り方のコツを教わりちょっとずつ慣れていく姿が微笑ましかったです。

高温の温泉には疲労回復の効果があり、前日のトレッキングで筋肉痛だった子どもたちもこの温泉のパワーで蘇ったと話していました。

大所帯でプログラムを進めていると、どうしても地元の人たちの生活を感じる機会が減ってしまいがちですが、キャンプシップアカデミーではできる限りローカルを感じて、不便さも旅の一つであるという考えのもとで敢えてこうしたアクティビティを実施しています。

結果として、子どもたちと地元の方々とのコミュニケーションも生まれ、貴重な体験をすることができました。

6日目

早いもので、この日で屋久島最終日。まだまだ遊び足りない様子の子どもたちをなだめつつ、武田館という屋久杉を使った工芸品を製造・販売作されているお土産屋さんに向かいました。

子どもたちは限られた予算の中でこの旅の思い出を一番表現できるお土産を吟味し、家族や友たち、自分自身にお土産を購入していました。

午後はフェリー太陽で種子島へ。海から見る屋久島はこれまた壮大で、逆に目的地の種子島には高い山がなく、2つの対照的な島が印象的でした。

種子島に到着し、徒歩で宿泊施設へ向かいます。今回お世話になったのは、南種子町自然の家という町営の宿泊施設。廃校を活用した施設で、冷暖房や調理器具も完備されている立派な施設でした。

午後の時間を使って、ペットボトルロケット製作を実施しました。翌日に向かう種子島宇宙センターのイメージを膨らませる意味も込めて、チームで協力して取り組みました。

そして、広い校庭を使って飛距離を勝負!なんと最も遠くまで飛んだチームは約100mも飛びました。500mlのペットボトルがまさかそんなに遠くまで飛ぶとは思っていなかった子どもたちは、驚きと興奮の表情を見せてくれました。

そして、このペットボトルロケット製作はその日の夕飯の食材を獲得するためのバトルでもあり、1) 飛距離、2) ロケットのデザイン性、3) チームワーク 4) 安全管理の4つの観点から審査員が評価し、勝ったチームから好きな食材を選んで良いというゲームを行いました。

各チーム手元に集まった食材を使い、自分たちで相談して夕飯を作ります。イタリアン風にパスタを作るチームもあれば、中華風にチャーハンを作るチームもあり、それぞれのチームが工夫をして取り組む姿は、1週間の共同生活で培った友情やチームワークの賜物だと感じました。

7日目

朝からバタバタとチェックアウトの準備をし、大型バスでJAXA種子島宇宙センターへ。日本最大のロケット発射場であるこの施設は、広大な敷地をバスツアーで回ることができ、ロケットの実物をみたり、発射場の近くまで行くことができました。

子どもたちはロケット自体のスケールの大きさに触れることはもちろん、この大きな塊が遥か上空の宇宙まで行き、そこで任務を完了するということを聞いて、宇宙の壮大さを体感する瞬間でした。

宇宙センターの見学が終わると、帰路へ。キャンプシップアカデミーの一行は種子島空港へ。Hub&Laboのメンバーは空港でお見送りをしてくれた後、西之表港まで行きそこからフェリーで屋久島に戻りました。

最後に

こうして振り返ると、改めて7日間で体験したことの広がりと深さを感じます。子どもたちにとっては、大自然と科学を心に刻む機会になったのではないかと思います。

最後に、引率していた筆者が印象的だったエピソードを一つ紹介させてください。

今回のプログラムは、下は小学校1年性、上は高校1年性までが参加していました。最初はみんな初めて会う友達との距離感をはかりつつの生活でしたが、4日目を境に明らかな変化がありました。自由時間になると年齢関係なくカードゲームをしたり、年長者が小さい子のケアをしたりと、自分たちでこのキャンプを楽しくする意欲や、助け合う意欲が生まれたのです。

この様子を見ていて、期間の長いキャンプの醍醐味を感じ、子どもたちの自立成長や協調性を養うためにはロングキャンプは有効であるという実感を得ました。

もちろん、親元を離れる生活に慣れていない子がいきなり7日間のプログラムに参加するのはハードルが高いです。キャンプシップアカデミーとしては、経験値の異なるさまざまな子が参加でき、キャンプシップの活動を通じて少しずつ非認知能力を育む階段を登っていけるような、そんな場所を創っていきたいと考えています。

2025 屋久島&種子島 - 大自然と科学を心に刻む冒険